2020年4月29日水曜日

今年2月、武漢に派遣された移動式薬局で、新型コロナウイルス肺炎の治療のための漢方薬を処方する職員 写真:新華社/アフロ 全世界で75万人もの感染者と3万6000人超の死者を出している新型コロナウイルス。最初の感染者を出した中国から衝撃のニュースが届いた。 3月23日、中国中央指導チームのメンバーで国家中医薬管理局党組の書記を務める余艶紅(ヨエンコウ)氏が会見を開き、 「全国の感染者のうち7万4187人が中国医薬(漢方薬)を使用。うち、(1月23日に封鎖された武漢市のある)湖北省では6万1449人が使用したが、総有効率は90%以上にのぼった」 と明らかにしたのだ。 漢方薬を処方して、しかも9割が改善――にわかには信じられないが、中国の医薬品事情に詳しい『健康ビジネスインフォ』代表取締役で薬学博士の鄭権(テイケン)氏によれば、「中国では西洋薬よりも漢方薬が優先されるのが常識」だという。 「急病の場合は西洋薬が投与されますが、風邪などの一般的な病気や、慢性的な病気には漢方薬が処方されます。そして、重病の際はどちらも併用するのが基本。新型コロナウイルスによる肺炎の治療も、当初は西洋薬がメイン。漢方薬は必要に応じて使用される程度でした。治療実績が増えるにつれ、漢方薬の使用が推奨されるようになったのです」 中国・湖北省の『中西医結合(チュウセイイケツゴウ)医院』が退院した患者52例を分析したところ、西洋薬と漢方薬が併用された34例は、西洋薬のみ処方された18例に比べて症状が顕著に軽減。退院までにかかる時間も短縮されたという。 1月29日から別の病院で漢方薬治療を始めた専門家チームは2月6日、漢方薬『清肺排毒湯(セイハイハイドクトウ)』の使用を全国に通達している。また、98名の患者に『清肺排毒湯』を投与したところ、投与開始3日後に患者の3割から咳(せき)、8割強から発熱の症状が消え、6日後には79人の患者に症状の改善が見られた、という報告もあった。 2月18日には日本の厚生労働省にあたる国家衛生健康委員会が「新型コロナウイルス感染による肺炎の診療案(試行第6版)」を策定。政府として『清肺排毒湯』の使用を推奨し、日本の厚労省と国立感染症研究所にも報告している。 麻黄(マオウ)や炙甘草(シャカンゾウ)など21種の成分からなる『清肺排毒湯』は、いまから約1800年前の漢の時代の医師、張仲景(チョウチュウケイ)が著した『傷寒雑病論(ショウウカンザツビョウロン)』に記載されている漢方薬だ。現在、日本で買える漢方薬だと『胃苓湯(イレイトウ)』、『麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)』、そして『小柴胡湯加桔梗石膏(ショウサイコトウカキキョウセツコウ)』を併用したのと近い効果が得られるとされている。

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